【稲見昌彦/書籍】「スーパーヒューマン 誕生! 人間はSFを超える」の面白かったところ3点(2016/2/11読了)

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 AR(拡張現実)、VR(仮想現実)等が最近注目されていますが、同書の著者は人間拡張工学なる学問の専門家です。つまり、AR、VRを含む、人間の能力を拡張するための工学技術を研究している人です。1972年生まれの40代前半の研究者の方です。

 本書のタイトルからも分かる通り、様々なSF的なアニメ、漫画、小説を題材とした切り口から、人間の能力を拡張して実現されるのであろう世界観をイメージさせ、そこに現実の工学技術で「ここまでできる!」を紹介する良書です。

 著者の稲見氏は、“甲殻機動隊”で出てくるいわゆる「光学迷彩」的なものを、この現実の世界で、現実的な技術の組み合わせにより、ある意味で実現した人としても有名だそうです。

 本書「スーパーヒューマン 誕生! 人間はSFを超える」の中で、「へぇー」と感心したトピックを3つご紹介します。

<目次>
1.なぜ人々は人型のロボットを開発したがるのか?
2.VRによって体験がシェアできる?
3.技術で脱身体も可能?
4.読後の所感


  

1.なぜ人々は人型のロボットを開発したがるのか?


 日本のアニメの中には、ドラえもんをはじめ、パトレーバー、ガンダム等々、様々な人型のロボットが登場しています。しかしながら、工学という学問の世界では、ロボットといった場合には、必ずしも人型である必要はないのです。

 例えば、4足歩行のロボットの方が、2足歩行ロボットに比べて、技術的には簡単に実現できるだろうと言われています。でも、世界の多くの研究者が人型ロボット開発に心血を注いでいる。それはなぜなのか?実現しやすいものでいいじゃん…と。

 その疑問に対する同書の回答は明快でした。




 ポイントを絞って言うと、人間がロボットに期待することを考えると、人型の方が、都合がいいからだそうです。

 例えば、人間がこれまで行ってきた様々な作業をロボットにやってもらおうと考えたとします。その場合、人間がこれまでやってきた作業環境で、代わりにロボットに作業をしてもらうということですが、この作業環境は、実は人間の身体機能に最適化された環境であるというのです。

 仮に、自動車をロボットに運転してもらうことを考えましょう(ここでは自動運転にすればいいじゃん、とは考えず)。その場合、4足歩行ロボットであった場合、うまく運転できるでしょうか?そもそも自動車は人間の身体に合わせて作られた乗り物です。もしロボットに代わりに運転してもらうためには、人間と同じような身体を持っていないとダメなのです。

 だからこそ、2足歩行ロボットは技術的にも難しいけど、研究者は懸命に実現を目指して研究しているのだそうです。

2.VRによって体験がシェアできる?


 VR技術が一層進化して、現実感がかなり高まってくると、他者の体験をシェアすることが現実味を帯びてくると言われています。このことの何がすごいかというと、現状では、いくらお金と時間をかけても、ある特定の人の体験を他者がリアルに追体験することはできないからです。

 例えば、テニスの錦織選手が世界大会の決勝を戦っているまさにその体験を、他者が追体験できるでしょうか?テレビでの観戦、現地での観戦として、第3者として、そのプレイを観戦はできますが、追体験とまではいかないでしょう。

 でも、VR技術が進化すると、リアルな現実感をもって、あたかも自分が錦織選手になったかのような体験ができるみたいです。これってすごいことですよね。

 ちなみに、同書では、「オキュ旅」という、他者の旅の体験を、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)を使って追体験するプロジェクトが既に動いているそうです。それはそれでスゴイ!
 

3.技術で脱身体も可能?


 テレイグジスタンスという技術を使って、離れた場所にあるロボットをあたかも自分の体のような間隔で動かせる技術があるそうです。

 例えば、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)をかぶり、ロボットに搭載されたカメラが見ている風景を見つつ、自分の頭を動かすと、それに同期してロボットの頭も動き風景が変わる。この仕組みを使っていると、自分があたかもロボットになったような感覚になるそうです。

 そして、そのロボットを使って、自分のリアルな身体を見てみると、意識が肉体から離れる「幽体離脱」と呼ばれる現象のように、離れた場所にあるロボットに自分の心が移動したように感じるのだと。

 これを著者は「脱身体」と言っていますが、こんな体験をしてしまうと、自分の意識や心って何だろうと、哲学的な思索をしてしまいそうになります。不思議ですね。でも将来、そういった体験は当たり前になるのでしょうか。VR技術次第でしょうね。

4.読後の所感


 本書「スーパーヒューマン 誕生! 人間はSFを超える」を読み終わり感じたことは、技術の詳細を突き詰めた本ではないということ。むしろ、AR(拡張現実)、VR(仮想現実)を使うことで、人間の活動や世界の感じ方がどのように変わるのか、そのヒントがちりばめられた良書だと思います。

 研究者と言えば、新しい技術について、延々と語るというイメージがありそうですが、本書の著者である稲見氏は、工学研究者でありつつ、さらに技術の活用や社会の変化までを分かりやすく社会に発信できるまれな人なのではないかと思います。

 また、AR、VR等は最近注目されていますが、まだまだキラーアプリがない状況です。将来の有用なアプリ開発にも役立つ視点に触れるためにも、企業の新規事業開発担当者などにも是非読んでもらいたい本です。

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