【日本の統計2016/書籍】出版の戦略。書籍の出版点数と平均定価(総務省統計局 日本の統計2016)

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 先日の3月10日に、総務省統計局から「日本の統計2016」が公表されました。

 様々な分野の統計データが公表されています。

 今回その中で注目したのが「書籍の出版点数と平均定価」というデータとなります。

 昨今(というかそれなりに前から)、出版不況と言われていて、雑誌が休刊や廃刊になったり、出版社の経営が傾いたり…と非常に苦しい出版業界のようです。

 しかし、実際のところ出版物の状況はどうなのか?出版点数と平均定価の観点から見ることができます。

 そもそも、世の中のみんなは、本を読まなくなったと言われています。その真偽はわかりませんが、普通、人々が本を読まなくなれば、本は売れなくなり、したがって出版数が減っていく。

 さらには数が少なくなるので、価格も上昇していく…というのが想定する状況なわけです…

 しかし、この統計データを見るとあらためて、世の中の出版に関わる「アレ・コレ」が分かりました。以下では、そのポイントを紹介します。

<目次>
1.出版点数は増えている?
2.書籍の分野では、社会科学、芸術、文学がビック
3.出版点数と平均価格の変化に見る、出版の戦略?
4.社会科学、自然科学、技術、産業の戦略の成否は?





1.出版点数は増えている?


 そもそも、日本での出版物の数は増えているのでしょうか?

 新刊書の数は年間でどれくらいあるのでしょうか?

 日本の統計2016にはそのデータが載っています。

2016-03-12_0001.jpg

 この結果を見ると、日本の年間の書籍の出版点数は、およそ8万点前後。

 そして、平成25年までは出版点数は増えている様子がわかります。

 「えー、みんな本を読まなくなっているのに?」という疑問がありますが、恐らく、売れる本と売れない本をあらかじめより分けることができない。

 なので、とにかく多くの点数を出版して、その中で、ヒット作が出ればOKくらいの方針なのでしょう。

 また、平成25年までは、平均定価も低下しているようです。

 この点もあって、出版界では、安い書籍を数多く出版するという方針なのではないかと考えられます。

 ただここで注目したいのが、平成26年です。

 一転して、出版点数は1,500点ほど減少し、平均定価は130円程上がっています。

 ここにきて方針転換なのでしょうか?売れそうな書籍に絞って、それなりに高い価格で売り出すという方針に変えたのでしょうか。

2.書籍の分野では、社会科学、芸術、文学がビック


 次に、平成17年と平成26年とで比較してみました。

 ただ、そう出版点数の比較では面白くありません。

 書籍と言っても、いろいろな分野の本があるわけですので、分野別の書籍出版点数を平成17年と平成26年とで比較してみました。

2016-03-12_0002.jpg

 これを見ると、ひときわ、社会科学、芸術、文学の出版点数が多いことがわかります。

 社会科学では1万5千点、芸術と文学では1万2千点前後となっています。

 他の分野の書籍出版点数と比べても大きい。

 また、平成17年と平成26年での出版点数の比較では、全体の出版点数が増加している中で、とある分野では出版点数は減少しています。

 先ほどの社会科学、文学などは減っていますね…

 一方、芸術はかなり増加しています。

 そんなに世の中に芸術に対する関心が高まっているのでしょうか?

 約10年前と比べて…ただ、約10年前との出版点数の比較だけでは、この出版業界の状況は見えにくいのも確か。

 結局、出版業界としては、市場規模がどれだけ大きくなったか、小さくなったのかが問題なわけです。

 その意味では、分野別の平均価格を合わせて見ると、結構なことがわかってきます。




3.出版点数と平均価格の変化に見る、出版の戦略?


 そこで、各分野の出版点数、平均価格について、その平成17年と平成26年との差分をプロットしてみました。

 ここからそれなりのことが読み取れます。

2016-03-12_0003.jpg

 横軸が出版点数の変化(平成17年と平成26年の差分)、縦軸が平均価格の変化(平成17年と平成26年の差分)を示しています。

 この結果を見ると、学習参考書、哲学、児童書は、出版点数も増えているし、平均価格も上がっている。つまり、この分野の書籍市場は大きくなっています。

 逆に、言語、文学、歴史、総記といった分野では、出版点数が減り、さらに平均価格も下がっている。

 そのため、この分野の書籍市場は小さくなっている。

 そして微妙なのが、社会科学、自然科学、技術、産業です。社会科学は、出版点数は減っているものの、平均価格は上がっている。

 出版点数の減り方と平均価格の上がり方によっては、市場は大きくも小さくもなる状況です。

 一方、自然科学、技術、産業は、出版点数は増えているものの、平均価格は下がっている。

 これらの分野も、出版点数の減り方と平均価格の上がり方によっては、市場は大きくも小さくもなる状況です。

 つまり、社会科学は、ある意味で「高級志向」の戦略をとっているとも見て取れます。

 数を追うのではなく、単価の高いものでも購入してくれるターゲットに訴求していると。

 それに対して、自然科学、技術、産業は逆であり、「低価格志向」の戦略とも見え、安いものを数多く売るという戦法。




4.社会科学、自然科学、技術、産業の戦略の成否は?


 さて、上記のように、社会科学と自然科学、技術、産業では、真逆の戦略で出版事業をしてきたと見て取れるわけですが、その戦略の成否はどうなのか?

 日本の統計2016には、分野ごとの出版点数と平均価格というデータがあるので、単純に両者を掛け合わせることで、その値を各分野の市場とみなし、分野ごとに平成17年と平成26年の市場の変化を見てみました。

2016-03-12_0004.jpg

 するとどうでしょう。

 はっきりと2分されます。

 社会科学、自然科学分野の書籍では、戦略は「高級志向」と「低価格志向」と真逆ですが、市場が拡大しているという点で、成功しているのではと。

 一方、技術、産業では市場は小さくなっている。安くしてみたもののそれほど売れなかったという結果ですね…

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