日本の統計2017/書籍:書籍の出版点数と平均定価から見る出版戦略分析をフォロー(2016年に続き)。(総務省統計局 日本の統計2017)

 一年前、下記のタイトルで総務省統計局の「日本の統計2016」を使って、日本の出版に関する戦略の分析をしました。

【日本の統計2016/書籍】出版の戦略。書籍の出版点数と平均定価(総務省統計局 日本の統計2016)

 今年も総務省より「日本の統計2017」が公表されていますので、フォローがてら、「書籍の出版点数と平均定価」というデータを使い同様の分析をしてみました。

 あらためて、「書籍の出版点数と平均定価」というデータについておさらいすると、日本の1年間の出版点数と平均定価のデータが、経年で見ることができるデータとなります。

 昨今、世の中のみんなは、本を読まなくなったと言われており、それに合わせて出版業界も様々な対応をしているものと想定されます。実際、昨年のデータを使ってみた際にもその違いが明らかになりました。

 本年の統計データを見てその傾向の変化について、あらためてフォローしてみましょう。何か変化が起きたのかしら?

<目次>
1.出版点数は増えている?をもう一度。
2.書籍の分野では、社会科学、芸術、文学がビック
3.出版点数と平均価格の変化に見る、出版の戦略の分析フォロー(平成26年に続き)
4.社会科学、自然科学、技術、産業の戦略についてのフォロー(平成26年に続き)





1.出版点数は増えている?をもう一度。


 日本での年間の新刊出版物の数は、平成25年までは増加傾向にありましたが、それ以降は減少傾向に転じています。

 平成25年と言えば、林修の「今でしょ!」、滝川クリステルの「お・も・て・な・し」、あまちゃんの「じぇじぇじぇ」、半沢直樹の「倍返し」が新語・流行語大賞の年間大賞を受賞した年でもあります。

 この年が新刊出版のピークだったのですね。

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 さて、この結果をもう少し良く見てみると、日本の年間の書籍の出版点数は、平成25年をピークとして、平成27年には8万点程度となっています。

 ピークである平成25年と比べて、2500点程減少しています。これは単純に1日換算すると、219点/日の出版となります。ちなみに、平成25年では、226点となります。これを見ると、それほどまだ減少幅は大きくないか…

 一方、平均価格を見てみると、出版点数でピークであった平成25年が最も平均定価が安く2178円となり、それ以降は増加しており、平成27年には2318円となっています。

 こうしてみると、平成25年あたりは、安くてもたくさん販売して売り上げを立てるといった販売戦略であったのではないか、と予想されます。


2.書籍の分野では、社会科学、芸術、文学がビック


 次に、平成17年と平成27年とで、書籍の分野別に、出版点数のボリュームを比較してみました。

 ここでそもそも出版点数の多い分野として、「社会科学」、「文学」、「芸術」がトップ3となります。そこでこの3分野について、平成17年と平成27年を比較すると、出版点数が増加しているのは、なんと「芸術」だけとなります。

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 ただし、トップ3「社会科学」、「文学」、「芸術」について、直近の平成26年と平成27年の比較で見てみると、出版点数は減少しています。特に社会科学では、その減少幅が大きく250点も減少しています。それ以外では100点程度の減少となります。

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 芸術に関する書籍は、10年前と比べて出版点数は増加しているものの、直近では既に減少の流れに入っている様子が見て取れますね…また、最も出版点数が多い社会科学は、減少が加速しているとも言えるのではないかと。

3.出版点数と平均価格の変化に見る、出版の戦略の分析フォロー(平成26年に続き)


 さて、各分野の出版点数、平均価格について、その平成17年と平成27年との差分をプロットし、昨年の前回記事と比較してみましょう。

 横軸が出版点数の変化(平成17年と平成27年の差分)、縦軸が平均価格の変化(平成17年と平成27年の差分)を示しています。

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 また、下図は横軸が出版点数の変化(平成17年と平成26年の差分)、縦軸が平均価格の変化(平成17年と平成26年の差分)を示しています。

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<平成17年と平成26年の差分:昨年の記事より>

【学習参考書、哲学、児童書】
 この結果を見ると、平成17年と平成26年との比較では、学習参考書、哲学、児童書は、出版点数も増えているし、平均価格も上がっている。つまり、この分野の書籍市場は大きくなっていました。

 しかし、平成17年と平成27年との比較では、児童書の平均定価は増加しているものの、出版点数は減少に転じています。また、学習参考書では出版点数は増加しているものの、平均定価は減少しています。

 つまり、児童書は高く売れるものに絞り込み、学習参考書は価格よりも数で勝負といった方向に変化しているのではないかと思います。

【言語、文学、歴史、総記】
 一方、言語、文学、歴史、総記といった分野については、平成17年と平成26年との比較では、出版点数が減り、さらに平均価格も下がっている。そのため、この分野の書籍市場は小さくなっている。

 しかし、平成17年と平成27年との比較では、言語では、出版点数は減少しているものの、平均定価を増加させしている。また、歴史では、平均定価は減少傾向のままであるが、出版点数を増加させ、量で勝負する流れとなっています。

【社会科学、自然科学、技術、産業】
 社会科学、自然科学、技術、産業は、平成17年と平成26年との比較では、微妙な立ち位置でした。例えば、社会科学は、出版点数は減っているものの、平均価格は上がっている。出版点数の減り方と平均価格の上がり方によっては、市場は大きくも小さくもなる状況でした。

 また、自然科学、技術、産業は、出版点数は増えているものの、平均価格は下がっている。これらの分野も、出版点数の減り方と平均価格の上がり方によっては、市場は大きくも小さくもなる状況です。

 その中で、平成17年と平成27年との比較では、産業が出版点数も減少傾向に転じています。つまり、価格も減少、出版点数も減少ということで、市場規模が縮小する形になっています。




4.社会科学、自然科学、技術、産業の戦略についてのフォロー(平成26年に続き)


 社会科学と自然科学、技術、産業では、真逆の戦略で出版事業をしてきたと見て取れるとして、昨年の記事ではその戦略の成否を各分野の市場で比較しました。

 具体的には、日本の統計2016には、分野ごとの出版点数と平均価格というデータがあるため、単純に両者を掛け合わせ、その値を各分野の市場とみなし、分野ごとに平成17年と平成26年の市場の変化を比較しました。その結果が下記でした。

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 そして、社会科学、自然科学分野の書籍では、戦略は「高級志向」と「低価格志向」と真逆ですが、市場が拡大しているという点で、成功しているのではと、と分析しました。

 同様に、技術、産業では市場は小さくなっているとして、安くしてみたもののそれほど売れなかったという結果ではないかと分析しました。

 そこで、平成17年と平成27年との比較として、同じ分析をしてみました。ただし、前回との違いは、社会科学、自然科学、技術、産業に加えて、歴史、言語、児童書も微妙な立ち位置となり、出版点数と平均価格の変化の仕方によっては、市場は大きくも小さくもなる状況となっています。

 そこで、社会科学、自然科学、技術、産業、歴史、言語、児童書について、平成17年と平成27年の市場の差分を出してみました。

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 この結果を見ると、市場が拡大しているのは、自然科学と児童書だけとなります。それ以外の分野は、軒並み市場は縮小しています。特に、技術と産業は減少幅が大きい状況です。

 中でも、社会科学については、平成17年と平成26年との比較では、自然科学と同程度に、市場が拡大という状況でしたが、平成17年と平成27年との比較では、減少に転じています。

 この一年での販売戦略が上手くいっていなかったのではないかと思われます。いずれにしても、平均定価と新刊出版数のバランスによって、市場の拡大縮小が変わるのですが、各分野でなかなかうまくいっていない様子がうかがえます。

【日本の統計2016/書籍】出版の戦略。書籍の出版点数と平均定価(総務省統計局 日本の統計2016)

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