自粛要請前後の人の移動状況の変化を位置情報で可視化する取組が活発化





 ほぼすべての人がスマートフォンを持ち歩く昨今、スマートフォンから取得される位置情報が日々蓄積されるようになっています。この位置情報が活用されるシーンとして、しばしば台風や地震等の災害時の人・自動車等の移動状況分析などが挙げられます。

 直近では、新型コロナウイルス感染症対策として、不要不急の外出自粛要請に伴う人の移動の変化を分析するために使用されています。

 既に2020年3月末の時点で、不特定多数の位置情報を取り扱うITプラットフォームを有する複数の会社により、分析結果が紹介されているところです。本日は、その分析結果の一部をご紹介。



1.人流変化のエリア別比較:クロスロケーションズによる都心繁華街6エリアの人流変化の分析


 クロスロケーションズ株式会社は、位置情報データ活用プラットフォーム「Location AI Platform」を使用して、新型コロナウイルス感染症に関する人流変化を分析したレポートを公表しています。

 そのレポートの第2弾では、2019年3月1日~3月7日(昨年)と2020年3月1日~3月7日(今年)の比較として、繁華街などでの人流変化を検証しています。

 この結果によれば、昨年と比べて今年は、池袋エリアでは約34%の減少、新宿エリアは約35%の減少、渋谷エリアは約13%減少、銀座エリア約30%減少、上野エリア24%減少、六本木エリア約40%減少と推計されています。

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 多くの繁華街において、30%程度の割合で人が減っている様子が見て取れます。ただし、このエリアの中で渋谷エリアのみ約13%減少と多と比べて減少割合が少ないエリアがあります。

 渋谷に行く人は、不要不急の外出自粛要請に対してあまり関心がない人が多いということでしょうか?それとも、渋谷は他の場所と比べてどうしても行かなくてはいけない場所(仕事でどうしても行かなくてはいけない等)ということなのでしょうか?

 上記の疑問については、次に紹介する世代別の人流変化の結果を見ると、もう少し様子が分かります。



2.世代別の人流変化:技研商事インターナショナル/KDDI株式会社が共同開発した「KDDI Location Analyzer」を用いた人流変化の分析


 技研商事インターナショナル株式会社は、KDDI株式会社と共同開発した地図情報システム「KDDI Location Analyzer」を使用して、「時差通勤」や「テレワーク」の推奨要請前後の都内4つのビジネス街の通行人口(20代以上)の変化を調査分析しています。

 具体的には、東京駅、新宿駅、渋谷駅、新橋駅周辺を起点とする半径500mの各エリアの通行人口を、性別・世代別・時間帯別に分析しています。

 なお、分析対象期間として、下記の3つを設定しています。

・政府要請前の期間 : 2020年 2月1日~2月25日までの平日
・政府要請後の期間①: 2020年 2月26日~2月28日
・政府要請後の期間②: 2020年 3月2日~3月5日

 上記の3つのそれぞれについて、2019年2月平日と比べて、変化の様子を整理しています。

 まず、全体として、全エリア(東京駅、新宿駅、渋谷駅、新橋駅周辺)及び全世代の平均として、昨年度との人流の比較をした結果が下図となります。

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 要請前(2020年2月1日~2月25日までの平日)は、昨年と比べて94.3%(約5.7%の減少)であるのに対して、要請後①、要請後②ではそれぞれ80.9%(約20%減)、70.5%(約30%減)となり、政府の自粛要請後、時間が経つにつれて人流れが減少している様子が見て取れます。

 それでも2020年3月2日~3月5日で30%減にとどまっており、逆に言えば、7割の人が昨年同様に出歩いているということになります。

 さて、ここで世代別に、政府要請後の期間②である2020年3月2日~3月5日でのエリア別の割合を下図に示します。

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 これを見ると、30代以上の世代では、どのエリアにおいても20%以上減少している様子が見て取れ、政府要請後に不要不急の移動が自粛されているとも考えられます。

 ただし、20代のみが異なる傾向として見えてきます。20代でも東京駅周辺においては25.2%の減少となり、他の世代と同様に減少しているところですが、新宿、渋谷、新橋においては、81.3%、87.5%、78.5%と2割未満の減少にとどまります。

 なかでも、渋谷に限っては、12.5%の減少にとどまり、他の世代が軒並み25%以上の減少となる中で得意な様子が見て取れます。

 この点を踏まえると、「1.人流変化のエリア別比較」において、池袋エリア、新宿エリア、渋谷エリア、銀座エリア、上野エリア、六本木エリアの中で、渋谷エリアだけが減少割合が少なかった要因は、20代の若者が多く来街する街であることであるように推測されます。


3.人の移動と位置情報の活用に向けて


 上記のように、災害等発生に伴って、普段の不特定多数の人たちの位置情報を基に、様々な人流分析がなされています。#上記の分析結果についての意見等は、ここでは脇に置いておきます。現状では、色々な意見があると思いますため。

 日々、スマートフォンで取得された位置情報は蓄積されており、したがってこうした分析も可能であるのですが、災害等の非常事態でないと分析結果を、一般の人々が閲覧等できないのは、少し残念な気がしています。

 データの収集・蓄積また分析にはコストがかかるため、一般の人々が好きな時にいつでもデータを閲覧するのは難しいという実情も分かります。

 ただ、普段からこうした蓄積されたデータで「こんなこともできる」「あんなこともできる」というイメージを持っておかないと、せっかくの蓄積データも宝の山ではなく、ごみの山になりかねない…。

 少しずつでも、より多くの一般の人がデータに触れ合い、新しい発想を生み出せる機会が増えてくるといいのですが…。