【浅子佳英、宇野常寛、門脇耕三/書籍】これからの「カッコよさ」の話をしよう(角川書店、2016/1/9読了)

 本屋で購入して以来、自宅で眠っていた本書を引っ張り出し、読み終わりました。本書『これからの「カッコよさ」の話をしよう』は、批評家、建築家、インテリアデザイナーの3人による対談集的な書籍。ファッション、建築、インテリア、そしておもちゃ等、様々な身の回りのモノの「カッコよさ」についての議論がおさめられています。  著者の浅子佳英、宇野常寛、門脇耕三の3名は、ともに70年代生まれの中間的な世代です。だからこそ、古すぎず、かといって新しすぎず、両者の良い点をミックスした感じの思想、発想のもとで、これからの「カッコよさ」について話してくれる書籍です。同書の中で、個人的に興味を覚えた部分を紹介します。 <目次> 1.「コト」の一元性と「モノ」の多元性 2.IoT時代の「モノ」から「コト」へ 3.まとめ 1.「コト」の一元性と「モノ」の多元性  現在、「IoT」というキーワードが世の中に氾濫しています。いわゆる、「モノのインターネット」のことです。情報通信技術の中で注目されている技術的なものです。  この現在の「IoT」のトレンドとして、新聞、雑誌、書籍等を読んでいると、「モノ」ではなく「コト」(体験やサービス等)で新しい価値を生み出していこうという考え方が喧伝されていると認識しています。  こうした世の中の認識がある中で、本書では次のようにバシッと言っている。 (同書P213-214)「コト」の抽象性、形のなさというのは、どうしても「気持ち…

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【真山仁/書籍】当確師(中央公論新社、2016/1/1読了)

真山仁氏。とてもお気に入りの作家です。同氏は、なんと作家デビュー10周年を迎えたようです。最新作「当確師」を書店で見つけて手に取ってみた際に、本の帯にデカデカと記載されていました。 大好きな作家ではあるものの、私個人的にはそのあたりには関心はない。ただ10周年と聞いて、10年前、自分は何をしていたのかな、と振り返ってしまいました。同氏のように世の中に良い価値を生み出して来たのかなと… 「ハゲタカ」に始まり、直近では「売国」「雨に泣いている」等、真山氏の作品は一通り読んできた中で、今回も本書「当確師」を読み終わって、やっぱり「いいな」と感じました。 主人公 聖達磨こと選挙当選請負人 ダルマ。凄腕の選挙コンサル。人の心の中の欲や謀略などを読み取り、次々と裏をかく思考がとても痛快。それから、選挙に出馬した黒松幸子、さっちゃんことNPO法人代表を務める社会活動家。深く社会福祉のあるべきビジョンを持ちつつも、現状の政治に対してただ文句を言うだけではなく、冷静に、そしてシビアに現実の改善を実現すべく振る舞う姿。 ああ、現実の世界にこれほど魅力的な人は実在するのでしょうか。あくまでも小説の世界だけの話なのでしょうか。いや、単に私の周りにそのようなスゴイ人がいないだけなのかしら。いやいや、もっと可能性がありそうなのは、魅力的な人がいても気づかない私の鈍感さかもしれないですね。

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【松田卓也/書籍】人類を超えるAIは日本から生まれる(廣済堂新書、2015/12/31読了)

同書は、最近至る所で見かける「AI」「人工知能」、そして「人類を超える知能」等のキーワードに引きつけられて手にした新書となります。 同書は、ディープラーニングに代表される注目の人工知能技術、その他新しい研究動向、超知能が2045年までに生まれるという「シンギュラリティ」の話について、有名実業家や研究者の論を紹介しつつ、人工知能の重要性を説く良書です。 今後の人工知能実現の際に、どの国が開発を主導するのかで、世界の中での日本のポジションが決まってしまうという趣旨だと読みました。人工知能というキラーテクノロジーを軸に、今後の日本の国際的な競争力を確保しなくてはいけないということは何となく理解できます。 ただ、個人的に非常に関心があることは、汎用的な人工知能、それも人間の知能を超えた人工知能ができ、そして人間の仕事や、やらなくてはならない作業などをすべて代わりに行うようになった将来、人間はどうなるのか?という疑問です。 そもそも、人は他の人たちの間で「どうしても差をつけて、優越感を感じたがる」生き物です。人が自身の能力を持って、他者との違いを表現する仕事という手段が人工知能に奪われた際に、何をもって人は他者との間に優越感を見出すのか。 美意識や、芸術に対する造詣が他者との違いを見出す対象となるのか?はたまた哲学的な思索、思想といったものになるのか?いずれにしても、実用的な能力が全て人工知能で代替えしてしまうようになれば、そのようになるのかもしれません。 それって、人工…

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【柚木麻子/書籍】私にふさわしいホテル(新潮文庫、2015/12/31読了)

近年本屋で見出した作家の中で、1, 2をあらそうお気に入りの作家さんです。「終点のあの子」「ナイルパーチの女子会」、もちろん「ランチのアッコちゃん」など、過去の作品もいろいろと読ませていただいています。とても面白い。 この2015年末に、柚木氏の小説を読めて、ああ、良い1年の締めくくりとなった気持ちでいっぱいになりました。 さて、本書のあらすじは読んでみてのお楽しみということにして、個人的に気に入った点をご紹介しましょう。なんといっても一番のお気に入りキャラは、主人公の30前半女子で小説家志望の中島加代子ではなく、文壇最後のドンファンこと東十条宗典先生なのです。 はじめのころは、登場するたびに、文壇の大御所というポジションからか、威張り散らして、酒、女と贅をつくした遊びをする遊び人。しかもこのところ物書きとしての質も伴っていない状況という、ダメな老害的な存在でした。 しかし、話が進むにつれて、若かりし頃の物書きとしての懸命な姿がちゃんとあり、さらに中島加代子といがみ合いつつも、どこか若手作家の文筆の才能のみならず、善悪は別とした人間としての力強さ的な魅力を認める姿が見ていてグッとくる。 そして、最後には、グレている感じがするけど、良識ある大御所として、名実ともに文壇に返り咲く姿が何とも心地よかったのです。もちろん、主人公の中島女史も魅力的です。 本書を読み終わり、現実を見渡してみる。分野も違うし現実世界の話ではあるけれども、文壇ではなくビジネスの世界にも、この東…

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